Computer Scienceの学位が取れる米国のオンライン大学University of the Peopleに入ってみた感想
2020年1月に申し込み手続きをして、1月30日開始のTerm3から、英語力証明のためのコースを受講している。
正確には、正式なComputerScience専攻の学生ではまだなく、Non-degree seeking studentという扱いではあるが…。
(2020.10.10追記)
現在は無事正式な学部生(Degree Seeking Student)となり、日本の大学からも14コース(単位数で言うと48)の単位移行が承認され卒業までの期間を短縮できることになりました。
他のUoPeople関連の記事はこちら:
また、他の海外オンライン大学・大学院との比較をこちらにまとめましたので参考になれば幸いです。
- (2020.10.10追記)
- University of the Peopleとは
- 学部生になるまでのプロセス
- 動機
- 他のオンライン大学院はどうなのか
- 日本の社会人向け大学院や放送大学はどうか
- ある日UoPeopleのことを知る
- English Composition 1 の授業内容
- やってみてどうだったか
- 今後どうするか
- 単位の編入に挑戦する。
University of the Peopleとは
University of the People(以下、UoPeople)とは米国の完全オンライン、学費無料の大学。
Computer Science のAssociate's Degree(短大相当)やBachelor's Degree(4年制大学相当)が取得できる。
別の専攻ではMaster of Degree(Master of Education)も取得できる。
事務手数料やコースごとの修了試験料などはかかるが、それでも4年トータルで$4,060という破格の値段。
学部生になるまでのプロセス
入学試験や選考はないが、正式な学部生(Degree Seeking Student)になるには英語力の証明や、いくつかのFoundationコースを一定以上の成績で修了する必要がある。
- オンライン申し込みフォームに必要事項を記入する
- 入学料($60)を支払う
- English proficiency を証明する
- 高校の卒業証明書などのドキュメントをアップロードする。
- オリエンテーションを受ける
- TOEFLなどのスコアを提出しなかった人はこのタイミングでEnglish composition 1というコースを受講する ⬅️私は今ここ(記事執筆時点)
- Foundationコースを受講する
- Online Education Strategies やProgramming Fundamentalsなど。
- 2つ以上のコースで一定の成績を修めると晴れてDegree Seeking Studentになれる
誰でも申し込める分、English composition 1やFoundationコースで脱落する人がかなり多いらしい。
実際、私のクラスは最初40人くらいが登録されていたが、今も継続して課題を提出しているのは18人だけだった。
今週Final Testが実施されるので、そこで一定以上の点が取れれば無事次のステップに進むことができる。
動機
私は就職して以来Webフロントエンドまわり(新卒当時はFlashとかRIAと呼ばれていたが…)のことをずっとやってきたけど、最近自分のwebエンジニアリングや数学の基礎力の無さを痛感することがしばしばある。
今の自分の専門性を高めるにしても、マネジメント職やその他ジェネラリストよりのポジションに舵を切るとしても、エンジニアとしての不変的な基礎力というものが必要だと感じてる。
数学やアルゴリズムなどはちょこちょこと自学したり、Courseraやudemyなどのオンライン講座をたまに見たりしているが、
正直、自分の継続的なモチベーション管理がとても難しい。
誰も強制しないし短期的な締め切りもない。
それに勉強してると、客観的な証明、欲を言えば堂々と履歴書に書けるレベルの成果が欲しくなってくる。
少し話は脱線するが、そういう意味では資格取得という手段はモチベーション管理にとてもよいと思う。
応用情報技術者試験は今年受験する予定。
とはいえ、試験に合格すればそれで基礎力がついたと言えるのかというとまた別だが…
他のオンライン大学院はどうなのか
ジョージア工科大学やアリゾナ州立大学のオンラインコース
ジョージア工科大学(Georgia Institute of Technology)や、アリゾナ州立大学(Arizona State University)では完全オンラインで Master of Computer Scienceが取得できるようだ。
卒業までのトータルコストはおよそこんな感じ。
- ジョージア工科大学 Online Master of Science Computer Science (OMS CS):$7,000
- アリゾナ州立大学 Online Master of Computer Science:$15,000
気軽に支払える金額ではないが、米国大学院としては破格の安さではある。
ただし、そもそもどちらの大学院もComputer Scienceの学位もしくはそれに相当する十分な知識があることが入学要件に含まれているので、
Artの学位しか持っていない私はハナから無理/(^o^)\
仮に、仮にもしComputer Scienceの学位が必須要件でなかったとしても、
高校数学も満足にできてないのにいきなり大学院、しかも英語とか流石に無理なのでは…。
まず専門的な内容の講義が理解できるレベルの英語力が必要だし、私はCSの基礎を勉強したいのだ…。
Computer Scienceの学位がなくてもOKなペンシルベニア大学のMCIT Online
しかし、ペンシルベニア大学のonline Master of Computer and Information Technology degree プログラム (University of Pennsylvania MCIT Online) は、Computer Scienceを専攻していない学生向けのものになっており、専攻問わずBachelor's Degreeがあれば応募できる。
実はこの大学のことはUoPeopleに入ってから知ったので
「えーっもっと早く知っておきたかった…!」
と一瞬思ったが、よくよく調べてみると
- 卒業までのトータルコストは$26,300。前述のオンライン大学院よりお高い。
- TOEFL iBTスコアの要件も高い。100点以上(120点満点)が推奨されている。
今すぐ気軽に応募できる感じではない。
私はTOEFLを受けたことがないのでまず受験が必要だし、TOEICとTOEFLのスコア換算表を見た感じ残念ながら現時点の私がすぐに出せそうなスコアでもない…。
とはいえ提供しているプログラムはかなり魅力的だ。
幸いにもCourseraでお試しコースが提供されていたり、Class Centralというプラットフォームで大学院のカリキュラムと同じ名前のコースが無料で提供されている ので、TOEFLのスコアアップにトライしつつコースを試してみようと思っている。
日本の社会人向け大学院や放送大学はどうか
日本の産業技術大学院大学の情報アーキテクチャコースやほかの社会人大学院はどうだろうか。
以前産技大の履修証明プログラムに半年間通ってたので雰囲気はかなりイメージがつくが、働きながら通えるカリキュラムと言ってもやっぱ通学がきつい。
履修証明プログラムのときは育休中の半年間だったからなんとかなったけど、あれが数年…となると二の足を踏む。
※ (2020.10.10追記現在は新型コロナウイルス流行下のため、産業技術大学院大学の授業はほとんどオンラインになっているようです。
ただ、取得できる学位は「情報システム学修士」となっており、「Computer Scienceの学位」 にこだわっている方は注意。
放送大学は…通学はたまにでいいらしいし、情報コースはあるけどコンピュータサイエンスの学位と言い張れるものなのかよくわからない…。
ある日UoPeopleのことを知る
とか思ってたときに、こんな記事がタイムラインに流れてきた。
わ、私が求めてたのはこれだーっ
- 費用は格安
- National Accreditation の大学ではあるが、れっきとしたBachelor of Computer Science
- 完全オンラインでライブ配信などのリアルタイムなコミュニケーションが一切不要というのもでかい。
- 決まった時間に家にいてPCを開いてまとまった時間作業、というのは子どもがいると地味に辛い。
- 求められる入学要件が他の大学院などに比べると低い
English proficiencyについては、私はTOEICしか持ってないがスコア換算表をみたかんじ、満たしているような気がする。
TOEICではスピーキングとライティングはカバーできないが、UoPeopleではスピーキング力は一切不要。
TOEFLを受けて十分なスコアを採ってから申し込んでもいいけど、試験日までに期間があくし、講座受けるだけで済むならそれでいいのでは?
とえいやーで申し込んでしまった*1。
なんせ失うものは入学手数料の$60くらいだ。
途中で「やっぱ微妙」ってなってもどのみち英語もComputer Scienceも勉強するつもりだったので時間の無駄にはならないだろう。
ちなみに、UoPeopleはNational Accreditationの大学だったのだが、つい最近regional accrediting agencyであるWASCの適正を受けたというニュース があった。
正式なRegional Accreditationの認定を受ける日は近いかもしれない。
English Composition 1 の授業内容
今受講しているEnglish Composition 1について。
コースのシラバスには以下のように書かれている。
The purpose of this course is to further develop students’ English language, reading, and writing skills as a foundation for their academic studies at UoPeople. The units focus on a range of texts and genres designed to improve students’ knowledge and understanding of academic discourse. Each unit also focuses on the progressive development of reading, grammar, writing and test-taking skills.
講座の内容の大部分はacademic writing
とcritical reading
になっている。
文法の指南はほぼない。
自分がなにか文法ミスしていたら先生や同級生からの評価で指摘されるのみである。(そして具体的に指摘してくれるとは限らない)
そして課題がめちゃめちゃ多い。
以下に一例を挙げる。
- Discussion Assignment
- リストアップされた短編小説の中から好きなものを一つ選んで、要約と、「なぜその物語を選んだか」「その物語が好きか好きではないか、そしてその理由」というレビューを3-4sentence以上で書く。引用する場合はAPA styleを正しく使う。
- 更に、3人以上の生徒の評価をする。0-10の点数をつけた上で、適切なコメントをする。
- Learning Journal
- 自由にテーマを選んで、five-paragraph essayを書く。信頼できる文献や論文からリサーチをした内容も、正しいAPA styleで引用して含める。
- Written Assignment
- descriptive paragraphもしくはillustrative paragraphを書く。テーマは自由。
- 提示された観点にしたがって他の3人の生徒の評価を行う。
- Graded Quiz
- 10問程度の選択式のクイズを受ける。文法やwriting/readingのノウハウ、引用の方法についての問題。
- リスニングの問題が出るときもある
この量が「毎週」出される。
週によってはWritten Assignmentがなかったり、クイズがなかったりする。
個人的にはDiscussion Assignmentが一番きつい。
課題図書として挙げられる短編小説を読むのがつらい。
なんせ古典文学が多いので、知らない語彙がバンバン出てくるし、難解な言い回しも多いので機械翻訳を通しても読解に時間がかかる…。
また、リサーチする際に論文やジャーナルを読む場合もあって普通につらい。
やってみてどうだったか
毎日強制的に英語に触れられる
そりゃ英語で授業を受けて、英語で課題を提出しているのだから当たり前なのだが。
授業だけでなく、入学にあたって膨大な量の募集要項やPolicyを読み込む必要もあった。
リーディングやライティングの速度は受講前と比べて早くなった…気がする。
授業は楽しい
English Composition 1の受講前のイメージとしては「TOEIC対策のような文法やリスニング、リーディングのコース」かと勝手に想像していたが全然違った。
academic writingとcritical readingにフォーカスを当てているので日本語を使う生活に於いても役立ちそうな内容になっている。
- 「topicとthemeとthesisの違い」
- 「フレームワークを使った5 paragraph essayの書き方」
- 「論文のabstractの分析の仕方」
- 「正しい引用の仕方」
- 「論理的な文章の書き方」
などなど、「これ日本の義務教育で教えてくれよ!」ってものが多い。
UoPeopleのacademic writing/critical readingの授業は結構面白くて
— えんぴつ (@empitsu88) 2020年3月15日
「thesisとtopicの違い」
「論文のabstractの分析の仕方」
「フレームワークを使った5 paragraph essayの書き方」
「正しい引用の仕方」
とか、これ日本の義務教育の時に知りたかった…ってなる
thesis(論文の命題)やessayのoutlineを作成する時もこういうジェネレーターを使うことが推奨されてて、
— えんぴつ (@empitsu88) 2020年3月15日
論理的な文章を構成するにはまずフレームワークを使って練習しろという考えらしい。
ほんとこんなん義務教育のときに教えて欲しかった…https://t.co/AAISJfehQc
完全オンラインの授業のため時間の融通が利く
通学は一切不要だし同期的コミュニケーションもゼロなので、自分のペースで学習ができる。
課題はや期末テストは一定期間内の好きな時間にやればOK。
これが本当に本当にありがたくて、おかげで子供を寝かしつけたあとの時間や、平日の通勤中、お昼休みの時間をあてられるので夫にはあまり負担をかけずに済んでいる…はず。
スマホでも教材の閲覧はほとんど閲覧できるし、課題の提出もできる。
課題がめっちゃ多い
学習時間の目安は1コースに付き1週間あたり15時間となっている。
実際には週に7〜10時間程度で済んでる*2が、それでもなかなかにきつい。
が、他のオンライン大学も「週13時間」とか「週15時間」が目安になっていたし、米国の大学は課題がやたら多いとも聞くし、この大変さはUoPeopleに限った話ではないのかもしれない。
ピア評価のシステムが面倒
UoPeople ではpeer assesmentというシステムを取り入れてる。
Discussion AssignmentとWritten Assignmentのスコアはpeer assesmentの平均値で計算される。
当然不当な評価をつけてくる生徒もいるので、不当だと思ったら自分で先生に抗議してスコアを修正してもらう必要がある。(先生の方から直してくれる場合もある)
「ピア評価のシステムはあなたの学びに大きく貢献する」という体らしいが、評価をするのも評価をされるのも正直面倒である。
最初の方は評価コメントも真面目に書いていたが、評価コメントの内容についてはコースグレードへの影響が微々たるようなので最近はある程度コピペしたり雑に書いている。
Degree Seeking Studentになるまでに時間がかかる
English Composition 1 を受けなかったとしても、全員まずFoundationコースを少なくとも2つ受けなければComputer Scienceの正式な学部生(Degree Seeking Student)になれない。
そしてコースを終えるには最短で1Term(9週間)かかる。
一定の成績を取れなかったらさらに追加でFoundationコースを受ける必要もでてくる。
ただ、無事Degree Seeking StudentになればFoundationコースは単位として認められる。
instructorの質にばらつきがある
同じUoPeopleの日本人学生と情報交換していると、
「え?そっちのクラスはそんなことで減点されるの?」
「課題についてそんな補足をしてくれたの?うちはなかったぞ」
という情報を得ることがしばしばある。
共通で提示される課題の指示も抽象的なものが多く、
「どのような内容が模範的か」「どのような形式を求めているか」がinstructorによって異なったりする。
ちなみに私のEnglish Composition 1 のクラスのinstructorは結構厳しいようで、
「エッセイのテーマはtoo personalだとだめ」
「一人称をつかって自分の経験を書くのはあまりよくない」
「minor grammartical issueがあるから1点減点」
とか言ってくる。
今後どうするか
9週間のプログラムで、ここまでなんとかすべての課題を漏らさず提出してきたので、あとは今週の課題とFinal Testだけこなしたら次のステップに進める。
けどこのままUoPeopleを続けるかはちょっと迷っている。
もともとわかっていたことだがなんせ4年制大学なので120単位取らないと卒業できない。
そしてその単位すべてが自分が学びたいものかというとそういうわけではない。
「 Greek and Roman Civilization」など人文系のコースや、他専攻の科目も必修に入っているのである。
次のTermに受講するFoundationコースはすでに決まっているようで、「Online Education Strategies 」と「Programming Fundamentals」になりそう。
さっさとアルゴリズムとか数学とかやりたいなあ…。
前述したペンシルベニア大学のプログラムの方も気になっているので、そちらのコースを試しに受けてみたりTOEFLを一度受けてみたりもしたい。
がさすがにすべてを並行してやるのは難しい。
でも次のTermが始まれば単位編入の手続きが開始できるので、そこでどれだけ移行単位が認められるか次第かな、と思っている。
単位の編入に挑戦する。
一定の手順を踏めば日本の大学からも単位移行ができるらしい。
目的はコンピューサイエンスの学習なので、リペラルアーツとかはできればスキップしたいという気持ちがある。
単位編入のざっくり手順
- 大学の成績証明(英語版)を母校の大学に発行してもらう
- 戸籍謄本を英訳する
- 結婚で名字が変わってるのでname change proof が必要だった
- アメリカの第三者機関に提出してEvaluation Reportを作ってもらう
- 自分が卒業した大学の成績が、米国のGPAに換算するといくつなのかを証明する必要がある
- 移行する単位をピックアップしてサマリーを書く ⬅私は今ココ(記事執筆時点)
- オンラインで申請する
- acceptされたら手数料( 1コースに付き$17)を払う
- done!
この手順は正直めちゃくちゃ調べたしめちゃくちゃ面倒だったので、同じことで悩んでる人のためにも後で記事にまとめたいと思っている。
(2020.10.10追記)
現在は無事English Composition1を修了
→Foundation Course を2コース修了
→正式な学部生(Degree Seeking Student)に
→単位移行の申請が受理されて、日本の大学からも14コース(単位数で言うと48)移行することに成功
他のUoPeople関連の記事はこちら: