えんぴつぶろぐ

子育て中のフロントエンドエンジニアのブログ。

娘の成長振り返り〜出産編〜 無痛分娩レポート

はじめに

2018年も間もなく終わろうとしているので今年のことを振り返ってみる。
今年の一番のイベントはなんといっても出産。
2018年3月に長女を出産し、今や生後9ヶ月になった。
今年どころか人生の中でもビッグイベントなので、今更ながらちゃんと記録を残しておきたいと思った次第。
また、私は麻酔分娩(所謂無痛分娩)を選択したので、無痛分娩について知りたいと思っている人の参考に少しでもなれば。

免責事項

  • ここに書かれているのはあくまで個人の体験です。 出産の経過や子育ては大変個人差が大きいので「こんな人もいるんだ」くらいのライトな気持ちでお読みいただければ。
  • また、無痛分娩を闇雲に推奨しているわけでもありません。 検討してる人はご自分でメリット・デメリットをよく調べ、候補の産院の説明は納得いくまで聞いて下さい。

最初の兆候

最初に陣痛らしきものが始まったのは妊娠39週間、予定日まであと数日、というときだった。
この日はいつも以上に寝つきが悪く、だるくて朝方5時ごろトイレに起きたら出血してた。
あっこれがおしるしってやつかな?
少量の出血だけなら病院に連絡はしなくていいらしいけど…。破水はしてないよね…?
もし、気づかないうちに破水してたらやばいのかな…。
なんて思ってるうちに、お腹が鈍く収縮するような痛みがするようになってきた。
その間隔はきっちり10分ごとだったが、痛いというより、重いなぁ、程度。

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メモ帳に痛みが来た時刻をメモってた。きっちり10分なのがわかる。

病院に電話すると、
「痛くないならただの前駆陣痛かもしれない。様子見て、どんどん間隔が狭くなってきたら来て」
的なことを言われる。
おいおい、すでにきっちり10分間隔だけど、これ以上間隔が狭くなっても大丈夫なのか?
もたもたしてると生まれちゃわない?
と思いつつ、まあ、まだ全然痛くないし今行ったら100%追い返されるな、と思い指示に従う。

妊婦っていつから入院するの?

ここで出産時の入院の流れついて説明しておく。
妊娠中、同僚や知人からたまに「入院は何日からですか?」とピュアな気持ちで聞かれることがあったけど、
妊娠の経過が順調な妊婦は、陣痛が本格的にくるまで入院はできない。
なので入院開始日もわからない。
出産予定日はただの目安であって、その日に陣痛が始まるかどうかは本人も医者にもわからない。
何ヶ月も早く産まれてしまう子もいれば、予定日前後に産まれる子もいれば、予定日を2週間すぎても産まれない子もいる。
※ただ、予定日を2週間すぎると母子共にリスクが高くなるので分娩誘発の措置が採られる場合が多い。

産院からは、
「初産婦さんは陣痛が10分間隔になったら病院に電話してね。状況をヒアリングするから、来ていいよって言ったら病院にきてね。」
「でもまだまだ産まれるのは先そう〜〜って判断したら追い返すかもしれないよ。」
「でも、破水したり、激しい腹痛があったり、大量の出血があったりしたら、様子を見ないで急いで病院にきてね」
と、説明される。
なので、「いつから病院に入院するか」は医者も妊婦も全くわからない。

たまにネット上とかで
「なんで臨月の妊婦が電車なんか乗ってるんだ、大人しく入院してろよ」みたいな的外れな発言を見かけるけど、
陣痛が来る前に入院できるのは、早産の恐れがある人、妊娠の経過に異常がある人、計画分娩の人など「イレギュラー」のパターンの人だけとなる。
(といってもなんらかのイレギュラーが発生する妊婦さんは非常に多く、なんら珍しいことではないけど。)

一方、経過が順調な妊婦は、正産期(赤ちゃんが産まれても問題ない時期。37週以降。)以降になったら、むしろお産を促すためウォーキングやスクワット、マタニティヨガなどの運動を産院に推奨される。
私は奇跡的に妊娠中なんの異常も指摘されなかった。(10ヶ月間全くない、というのは私の観測範囲の中だと珍しかった。)
なので臨月の時は毎日のように産院が開催しているマタニティヨガ教室に通ったり、3〜6km散歩してたりしていた。
ただ、歩いているときにいきなり陣痛がきたり破水する可能性もなきにしもあらず。
散歩するときは家や病院の周辺にし、なにかあったら陣痛タクシーですぐに病院に向かえるよう備えていた。

自宅ですごすこと、約20時間

話を戻す。相変わらずお腹の張りは規則的に来ていたけど、痛みはあまりなかったので普段どおり家で過ごしていた。
入院したらそのまま実家に帰って産後を過ごす予定だったので、自宅には1ヶ月ほど帰ってこれなくなる。
なので入院準備セットの最終確認したり、家事したり、掃除したり。

事前に助産師さんから
「初産なら陣痛きてもすぐには生まれないから。陣痛きたかな?と思ったらとにかく食べて。寝て。今のうちに体力つけといて。お風呂に入って体を温めるのもおすすめ。」
と言われていたので普段どおりもりもり食べ、湯船にもゆっくり浸かったり。
が、睡眠に関してはいざ昼寝しようにも鈍痛と緊張で全然眠れなかった…。朝5時から起きてたので寝不足だというのに。
陣痛間隔を気にしてきっちりメモをとっていたのも良くなかったかもしれない。
その結果あとで後悔することになるのである…。

そうこうしてるうちに痛みは少しずつ増していき、夜19時ごろからははっきりと「痛い」と感じるようになってきた。
未だに間隔は10分から狭まらないが、痛みの波が来た時は身動きできないくらいになってきたので、病院に電話し、向かうことにした。

いざ病院へ

事前に登録していた陣痛タクシーを呼んで、入院用の支度を持って病院に向かう。
この時すでに深夜2時。
夜間入口から病院に入って簡単な手続きをしてから、LDR(陣痛&分娩室)に通される。

荷物整理をしたり、入院着に着替えたり、設備の説明を受けたり、同意書を渡されてサインしたり。
この間、もちろん10分毎に陣痛は来るので時折フリーズしつつ行動する。
これ、私はまだ耐えられるレベルの段階だからかろうじて動けるけど、陣痛が進んでる人だったらろくに準備もできないし、同意書とか説明とか理解するの無理なのでは…?と思ったり。
現に、同意書の説明とかサインとかいくつかやった気がするけど、今となっては全く覚えていない…。

無痛分娩のプロセス

無痛分娩は、私が出産した産院では麻酔分娩と呼ばれていた。
ここでは陣痛がある程度進んでから麻酔を入れるのを推奨していたので、私の場合は「無痛」ではなく、陣痛の前半戦を味わった上での出産だった。
正確に言うと、子宮口が4〜5センチ開くのを待ってから硬膜外麻酔を入れる。

そこに行くまでには陣痛が始まってから約12時間、入院してから6時間かかった。
正直、途中で心が折れそうになる程度にはしんどかった…。
陣痛は人によって個人差が大きいので例えるのが難しいけど、その時点で「人生史上最大の生理痛が10分おきに、数分間続く」感じだった。
痛みそのものにも泣きそうだったけど、その痛みは今後どんどん強く、そして間隔が短くなっていく未来が約束されているという事実に絶望してた。

その産院は24時間いつでも麻酔分娩を受けることができるので、事前に申し込んでさえいれば、「やっぱり麻酔やる/やらない」を出産当日、陣痛の最中でも決めることができる。
「ある程度頑張ってみて、耐えられそうだったら麻酔なしで産んでみようかな」
と出産当日まで意気込んでいた私だったけど、脂汗が出るほどの陣痛にそんな決意はあっさりと揺らいだ。
子宮口4センチに達していないのに既にそれ。
陣痛の辛さのピークは全開と言われる子宮口10センチの、分娩最終段階なわけで、そこまで麻酔なしで産んでる人はどれだけの痛みなんだよ?と本当に尊敬の念を禁じ得ない…。

麻酔を入れることを決意するまで

出産前ではこの時が一番辛かったかもしれない。
LDRにはバランスボールやマットなど置かれ、好きな体勢で過ごすことができる設備が整っていた。
けれど、このときはNSTという陣痛の強さをチェックする機械をつけられていたため、仰向けからろくに動けず、どうやって痛みをやりすごしていいかわからなかった。
陣痛が来たときは腰や尾骨のあたりを強く押してもらうと良いらしいけど、
深夜故旦那も爆睡しており、(陣痛の初期段階のうちに寝ときな!と最初に言ったのは私なので責められない)
助産師さんもおらず、結局テニスボールを2個、腰の下に置くだけという焼け石に水な手法で一人耐え忍ぶしかなかった。
泣きながら旦那に声をかけて起こしてマッサージなりしてもらえば、もっとマシだったのかもしれない。
けれど、弱音を吐くと心が折れて、もう耐えられなくなってしまうんじゃないかってこのときは何故か思っていた。
今思えば、人に頼るのを我慢できるくらいの理性と余裕があったのだから全然大したことないレベルだったと思うけど。

「あ、これはだめだ、やっぱり麻酔にしないとだめなのでは、よし、入れよう」
と決意してからは時間の経過がものすごく長く感じた。

24時間いつでも麻酔ができる体制とはいえ、推奨されている段取りというものがある。
なぜなら麻酔2時間前からは何も食べることができない。
口にできるのは水・お茶・スポーツドリンクのみ。
でも分娩は体力勝負で、麻酔を入れてからも何時間かかるかわからないため、できるだけ食べられるうちに食べることを推奨される。
ようやく現れた助産師さんに「やっぱり麻酔入れたいです…」と控えめな感じに言ったら
「じゃあもうちょっと子宮口が開いてからのほうが良さそうだし、
今のうちにごはんを食べて、それから2時間後にまた進み具合チェックしようか!」と言われる。
えっ、どんどん痛みが強くなってきてるのに、まだ耐えるの…。しかも今ご飯手元にないし、買ってきてもらう時間+食べる時間考慮すると3時間以上あるのでは…。 と、軽く絶望したが、その時の私は妙に冷静で、
「とはいえ絶叫しまくるという、本格的な麻酔なしの陣痛に比べたらこんなものまだ序の口なんだろう」ともわかってはいたので、黙って了解する。
その頃深夜で痛みに悶続け体力も減っていたので、確かになにか食べておかないとやばい、という気持ちもあり。

結局そこから3時間ほど経って、朝8時位にようやく麻酔の処置が開始された。
買ってきてもらったおにぎりは結局痛くて2口くらいしか齧れなかった。

麻酔を入れてから

麻酔の担当の人が二人来て、脊髄の硬膜外というスペースに針を刺してチューブを挿入してもらう。
「麻酔処置中は大変危険なので動かないように」と事前に説明会で言われてたけど、陣痛は数分おきに来るわけで、動かないまま痛みといきみを逃すという高度な技を要求される。
麻酔が注入されてからは、徐々に徐々に効き目を感じてきた。
その後も麻酔医さんは麻酔の効きをチェックしたり、針を刺し直して位置を調整したりで、なんやかんや1時間以上は処置をしてくれたように思う。
やっぱ麻酔って刺して打てばいいってもんじゃなくて、デリケートな場所に入れるわけだし量とか位置とか、高度な調整が必要なんだな、そりゃ追加費用あんだけかかるわぁ、と思ったりする。
ちなみに麻酔の注入は一回だけではなく、お産が進むたびに随時足していく。
痛い時に自分でボタンを押して追加注入する機械も渡された。(もちろん、連打しても量が増えすぎることはない。)

また、麻酔を入れると陣痛自体が弱くなることが多く、その場合は子宮収縮促進剤を併用してお産を進める。
私も例に漏れず促進剤を使いつつ、また過ごすこと数時間。

麻酔が効いてきて痛みが和らいできたとはいえ、家で微弱な陣痛が始まってからその時点で30時間くらい経っていた。
その間は全く寝れていないので陣痛の合間は眠気と空腹との戦いだった。(眠くても陣痛で起こされる)

疲弊しつつも、いよいよ子宮口が全開になり分娩の最終段階に。
その頃にはすっかり麻酔が効いており、NSTの数値MAXレベルの陣痛がきても全く痛みを感じなくなってきた。

人口破水、会陰切開を経ていきんでいきんで、
そして入院してから13時間後、ようやく娘を産むことができた。

産んでから、産声をあげるまではほんの一瞬だったけど、すごく不安で「もし泣かなかったらどうしよう?」と緊張したことを今でも覚えている。
無痛分娩、痛くないんなら自分もそんな感動しないのかも…と、思っていたけど、
元気な泣き声を聞いて、安心と感動で自然と涙がこぼれていた。
あとは、足を伸ばした赤ちゃんは想像してた倍くらい大きかった。
「こんな大きい(身長55cm)のが本当に腹のなかにいたの?ふつうの人間じゃん!」と人体の神秘に驚いた。

麻酔分娩を選んで

途中まではそれなりにしんどかったけど、あくまで「それなり」で済んだので私は麻酔分娩を選択して本当によかったと思う。
ただ、もちろんリスクもあるので、検討してる人はご自分でメリットデメリットをよく調べ、候補の産院の説明は納得いくまで聞いて下さい。
私は自分や赤ちゃんに万一があったとき迅速に対応してもらえるよう、「母親と赤ちゃん両方のICUがある」というのと、「24時間麻酔医がいる」のを条件に産院を選んだ。
ただ、選択肢が豊富な都内だからこそ、そんな贅沢な条件で産める病院を探せたんだろうなとは思う。

24時間麻酔医がいない病院での無痛分娩は、深夜や休日の陣痛に対応できないため、自然な陣痛が始まる前から、陣痛促進剤と麻酔を入れてお産を進めるという計画分娩になることが多いらしい。
あらかじめ麻酔をいれるわけだからほとんど痛みを感じずにお産ができる人もいる一方、なかなかお産か進まない人もいるそう。
また、麻酔をしても急変した時に帝王切開となったり、鉗子分娩や吸引分娩になる可能性も十分ありえるので、そのあたりは理解した上で臨む必要がある。

この世には「無痛分娩とか甘え」「陣痛の痛みを乗り越えてこそ我が子に愛情が持てる」という考えの方がいらっしゃるらしいが、痛みを乗り越えないと愛情が云々はナンセンスだと思っている。
それを言ったら、ネグレクトや虐待している親はみんな痛みの少ないお産だったのか?
我が子を愛している親に無痛で産んだ人はいないのか?
ちょっと考えれば根拠が全くない言説だというのはすぐわかる。

そもそも痛みの感じ方やお産の進み方には個人差がありすぎる。
それなのに「乗り越えるべき」「耐えるべき」と人に押し付けるのは良くない。
もちろん、麻酔をうたず普通に産みたいという選択も尊重されるべきだけど、それを人に押し付けていいわけがない。

出産は無痛分娩だろうと普通分娩だろうと帝王切開だろうと命がけであることには変わりはないし、
(日本でも未だに年間50人前後の妊産婦が亡くなってる。)
10ヶ月間赤子を身ごもりつわりなどのさまざまな不調に耐え抜く点と、産後のダメージがつらい点に変わりはない。

最後に

なにより、今娘のことがめちゃくちゃかわいいし、娘のためなら命を投げ出せると当たり前のように思う。
だから出産時痛みがあったかどうかと愛情は別に関係がないと思っている。
出産方法で悩んでる人は、周りの声に惑わされず、自分がどうしたいかをパートナーや産院と話し合って決めて欲しいと思う。

思ったより長くなってしまった…。
入院中のことや退院後のことのことも忘れないうちに書いていきたいな。